2008年度前期タイトルレポート

『刑事問題』

タイトル背景

 刑事問題における本質とは何であろうか?社会学者であるE.デュルケム(18581917)は、「犯罪は社会秩序を正常に保つ機能がある」と述べた。この表現は、一見矛盾しているように思えるが、犯罪を社会から逸脱した行為として絶対悪とみなすことにより、我々の社会規範の連帯感を強め、それが社会秩序を保つことに繋がるということを意味しているのである。この作用は我々の世界に刑事問題が作用している1つの重要な視点である。
 それを裏付けるかのように、昔から学者たちは犯罪が何故おこるのか、犯罪が我々にどのような影響を我々に与えるのかを常に議論してきた。このようなことからどの時代や社会においても、犯罪とそれに対する刑罰は普遍的なテーマだと捉えることも容易である。
 今日において、連日に渡って数え切れないほどの刑事事件が、その事件の特質や大小に関係なく、各マスメディアによって報道されている。そのどれもが簡単に片付くような問題ではないために、我々は数々の賛否両論の声を聞き、独自に物事についての価値観を形勢し判断を下している。

 そのため、ほとんどのトピックにおいて、現状における問題や害、それらの原因と言ったものが把握しやすく、ASQは迅速かつ明快に終わるであろう事が予想される。
この点は、このタイトルが持つ最大の特徴でもある。さらにAPAとして、専門家の意見や事例などの情報がたくさんあるためにデータに基づいた効率的で建設的な議論がより可能であろう。また最後のコンパリソンにおいても、先ほども述べたように簡単に解決できる問題ではないために、価値観は賛否両論に分かれ、双方の熱い議論が期待できる。
よって、刑事問題はASQAPAの両面を考慮しても申しぶんないタイトルである。

メイントピックは、死刑、精神鑑定(刑法39条)、実名報道、自白強要、レイプの5 TOPICを置いた。

 

サブトピックとしては、飲酒運転、裁判員制度を置いた。また後者の裁判員制度はまだ効力が表面化されていないため、オブザベーションを用いるのが有用なのではないかと考えられる。


 

The death penalty

 

ASQ

CauseThe Japanese Government admits the death penalty.

 

ProblemThe death penalty is carried out.

 

HarmThe condemned criminals die by the death penalty.

 

PLAN

Direction The Japanese Government should help the condemned criminals.

MandateThe Japanese Government abolishes the death penalty.

 

AdvantageThe condemned criminals will not die by the death penalty.

 

<総評> 

近年、犯罪(特に凶悪犯罪)が増加し、国民の中でも実刑に対して大きな不安要素の1つとなっている。その中でも“死刑”というのは特別で、「死をもって罪を償う」べきであるのか、という議論はもとより、「“死刑宣告されたもの”の命は人として扱われるのか」という議論は“死刑廃止”というPlanを通じて、価値観の交換を促す1つの要因であると言える。エビデンスは容易に現状分析しやすく、「地下鉄サリン事件」や「鈴香容疑者」など、記憶に新しいものも少なくない。ディスカッションにおいても、死刑に対して賛成派、反対派とはっきり区別しやすく、おのおのの意見も多彩である。こういった観点から、議論が活発化すると推測できる。


 

Psychiatric Examination

 

ASQ

Cause: There is the 39th article of criminal law.

Problem: Mentally ill people don’t get punishment.

Harm: Victim’s families suffer mentally.

 

APA

Plan

Direction: The Japanese Government should help mentally ill people.

Mandate: The Japanese Government should abolish the 39th article of criminal law.

 

Advantage: Victim’s families will not suffer mentally.

 

 

[総評]

現在の日本の刑法は刑法第39条「心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為はその刑を減刑する」により精神障害者の犯罪を減刑もしくは無罪にするとしている。そしてこれは精神鑑定により判断される。しかしながらこの規定には問題も多い。

まず、被害者側の怒りのやり場が無くなるという事である。被害者側が犯人に刑を受けてほしいと望むのは自然な感情であり、それが規定によって叶わないのは到底納得できないものであろう。さらにはこの規定が重大犯罪を犯した凶悪犯を擁護する弁護側の逃げ道になっているというのである。つまり精神障害を偽らせて凶悪犯の刑の減刑を図るのである。さらには現在の精神鑑定は正確性を欠くという批判もある。

いずれにせよ議論は善悪の区別が出来ない精神障害者の人権を保護するのか、被害者側の救済を優先するのかで価値観は大きく分かれる。そのためAD側かDA側かのスタンスが極めて明確になり易く意見を交換し易い。加えてDAも種類が豊富なため議論のマンネリ化を防ぐこともできる。またCauseがシンプルでADが確認し易くより多くDA以降の議論が経験できるのでトピックにはうってつけである。今までタブー視されることも多かった責任能力という日本の刑法の最深部にそろそろ踏み入っても良いのではないか。


 

Real name report

 

ASQ

Cause: The Japanese Government permits the right that mass media can report real names.

 

Problem: Mass media report real names.

 

Harm: People suffer mentally.

 

APA

Plan

Direction: The Japanese Government should help people.

Mandate: The Japanese Government should make a new law.

 

Advantage: People will not suffer mentally.

 

 

総評

私たちの生活で情報は欠かせないものである。特に報道は犯罪の深刻さ、悲惨さを私たちに伝えてくれるものである。ゆえに報道機関は信憑性を持って国民に情報を伝えていかなければならないのである。国民が情報を知ることが重要であるつまり、知る権利がある。報道機関は、国民の目となり耳となり司法行政を監察する第三者機関として存在する。その裏側に、個人情報をむやみに他人に伝えてはならないという考え方もある。プライバシーの保護である。しかし日本でのプライバシーは本当に保護されているであろうか。報道機関の知る権利を利用した報道の自由のもとにプライバシーを剥奪された人は少なくはない。知る権利の名の下に個人を無視していいのだろうか。私たちは多くの情報から取捨選択して自分の情報を取り入れる。その中での「実名報道」はどれだけあなたの情報に取り入れられているだろうか。そもそも実名報道とは一体何なのか、誰のためなのか。

この実名報道では知る権利つまり報道の自由とプライバシーの権利といった両極端の権利が存在することによって、様々な意見が生まれることが期待される。ADDA側はっきりとしたスタンスを持つことができるので、奥の意見が反映されやすいとも思われる。このことによってディスカッションの意義である価値観の交換も活発に行われるのではないだろうか。

 参考「実名と報道」 日本新聞協会

 

 

Forcing Confessions

ASQ
Cause: There is no checking system in the room of investigation.

Problem: Police force suspects to confess.

Harm: Suspects suffer mentally.

PLAN
Direction: The Japanese Government should help the suspects.

Mandate: The Japanese Government should make new law.

Advantage: Suspects will not suffer mentally.

<総評>

『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判における原則にもあるように、はっきりとした事実もないにも関わらず、罪を与えることはあってはならない。そして、警察は被告人に対して真摯に状況証拠及び自白の有無を検証しなければならない。この当たり前のような作業が、現在、日本では行われていない場合が存在する。身近な事件では痴漢冤罪があげられる。また、日本弁護士連合会もこの問題解決に取り組み、一例として、映画を通して国民に疑問を投げかけている。今、警察とはなにをすべきか。法秩序を保つべきなのか、それとも、人権を守るべきなのか。議論の余地はあるといえよう。

ディスカッションを行う際に、制度理解に時間がかかる恐れがあるが、オピニオンメーカーのプロシ―ディング能力、プレゼン能力の発展も期待できる。またプラン次第ではあるがC−P−Hの構図がシンプルなためADを得やすいといえよう。DAのマンネリ化が懸念されるが、コンクルが得やすいトピックともいえる。コンパリでも、警察が登場人物にあることから新鮮な議論が期待できる。


Rape

 

ASQ

Cause : The Japanese Government does not set up enough checking system

and punishment

 

Problem : Females are raped by males.

 

Harm : Females die.

 

PLAN

Direction : The Japanese Government should help females.

 

Mandate : The Japanese Government should make a new law

 

Advantage : Females will not die

 

<総評>

レイプは、「魂の殺人」とすら評されるほど女性に精神的な苦痛をもたらし、その結果自ら命を絶ってしまう事例も少なくはない。そうでないにしても、事件後長らく続くトラウマやフラッシュバックによって、通常の生活が送れなくなってしまう女性も多い。また一方で、レイプと通常の性交渉の違いは女性の同意の有無に左右されるため、近年話題にもなっている痴漢冤罪のように被疑者の潔白の立証が困難ではないかという視点も考えられる。現在、デートレイプや夫婦間の性交渉の強要など、性交渉を巡る問題は複雑化、深刻化の一途を辿るのみである。これらはいじめなどに匹敵、または凌駕するほどの人権に対する蹂躙であり、非常に深刻な問題であると言える。しかし深刻でありながら、性的な話題は公共の場ではタブーとされ、議論の話題に上る機会は少ない。タブー視が続けば、女性によるレイプの告発は益々困難を極めるのみであるし、話題に上らなくてはレイプの実態が分からないままに固定観念や神話が罷り通り、解決への道は閉ざされたままとなってしまう。議論こそが解決への近道であり、我々がはっきりと事態を認識し、問題意識を明確化して、解決への道のりを歩むことが大切である。


<考察>

1、Cause

レイプに関しては様々なCauseが考えられ、レイプが発見される段階において、例えば女性が告発しづらい社会的状況であるというCause、または性欲のコントロールに支障のある男性が存在するというやや生物的なCause、再犯率が高い性犯罪(議論の余地はあるが)において懲役が短く、再犯が可能であるというCauseなど、いくつか考えることができるために難易度が高く、トリートやハンドリング技術の向上が期待できる。

 

2、Problem

「レイプ」のdefinitionは、actionが刑法によって定められており、明確である。しかし、女性のwillについては時期や状況などに議論の余地を残しており、これもトリートやハンドリング技術の向上が期待できる。インターネットによるEvidence探しでは、オーソリイティのあるEvidenceを見つけることに若干難はあるが、書籍などを参照すればEvidenceは豊富であるといえる。

 

3、C-P Linkage

Causeで述べたように様々なCauseが考えられるため、若干複雑になってしまう可能性がある。だからこそ、Cause, C-P linkを通じたトリート、ハンドリング技術の向上が期待できると考えられる。

 

4、Direction, Mandate

Mandateは複数考えられ、例えば抑止力の増加・再犯の防止を目的とした去勢や男性器の切除若しくは懲役年数の増加、アメリカのメーガン法を手本とした性犯罪者の情報公開制度、女性の告発を促せるようセカンドレイプ防止の環境作りなど、Mandateによって千変万化する新鮮なDiscussionを行うことが出来るのではないかと考えられる。

 

5、その他

総評でも触れたように、性的な話題は公共の場ではタブーとされ、Discussionで扱うことに抵抗を感じる方も居られるということは想像に難くない。しかし、いつまでもタブー視したまま、臭いものに蓋をするような姿勢のままでは、解決へは程遠いと言えよう。Rapeは時に自殺にさえ駆り立てるほどの精神的苦痛を負わせる重大な人権侵害である。被害者女性への影響があるため、マスメディアでこそ「いじめ自殺」のように盛大に騒ぎ立てられることはないが、間違いなく深刻な問題の一つである。勿論Discussionはセクハラの場でもなければ猥談の場でもない。よりよい世界を模索するための場である。そのことをきちんと自覚し、よりよい世界を構築しようとするならば、この「Rape」というトピックは避けて通れない道だと言えよう。

Regulation

 

@刑事司法制度{犯罪に関する国家の体制(例えば刑法など)}に関わっていること。

A現行の法律に新しく条項を作るのは、禁止、改項、廃止のみとする。

(理由:現在犯罪として扱われていないトピックを禁止するため)

B日本政府の政策範疇内であること。

C他のタイトルのメジャートピックと重複するトピックは禁止する。

例:医療→安楽死・中絶

 :労働→過労死・医療ミス・セクハラ

D日本政府の歳出のみで解決するマンデートは不可とする。

Eエビデンスが明快であること。

 

 

 

 

 

 

 

なお質問等があれば下記の連絡先までご連絡をよろしくお願いします。

KDL連盟長 仁田貴恵 (bss90156@kwansei.ac.jp)

TDF連盟長 山口悠樹(haru01051988@yahoo.co.jp)

JIDM委員長 飯嶋秀幸(hide-guy.day@hotmail.com)

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

                   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   

  

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

inserted by FC2 system